ゼロリスク幻想を超えて

どうも違う

被災地で放射線の問題についてどうお話をしたらよいのかということをしゃべってきました。
マスメディアの流している情報と実態とが、ちょっと違うんじゃないのか、というのが率直な印象。
マスメディア情報しか見ていないと、みんなが一丸となって放射線の恐怖におびえているようなイメージを描きがち。でも、そういうイメージを与えるのは、一部の声が大きい人々。どうも、声をあまり上げない大多数の人々は、

  • 生活のために、他に気にしなければいけないこともある。
  • 放射線のことだけ気にしているわけにはいかない。
  • 実態を正しく把握したうえで現実に無理のない対処をしていきたい。

という、落ち着いた考えを持っているもよう。

政府もマスメディアも声の大きい人々のことだけを聞くのではなく、丁寧に声なき声を拾い上げる作業をしていかないと、方向を大きく見誤ってしまう(すでにそうなりつつある)。リスク評価の専門家も、ここらの実態は良く把握したうえでコミュニケーションの方法を考えていかないといけない。過激なゼロリスク論者の主張と現実とのはざまで困惑する人々に適切な情報を提供していくのには、こういうネット上の情報発信だけでは完全に不十分で、リアルな場でのコミュニケーションが必須。

専門家の見分け方

原発事故この方、あちこちで「専門家」が跋扈して、何がなにやら、という方も多いのではないでしょうか。

ざっくりとした「専門家」の見分け方を示します。

その方のプロファイルを調べましょう。研究履歴やら過去の発表内容、著書などです。
調べた過去の実績を踏み越えた発言をしているようであれば、その方の発言は留保しておきましょう。
たとえば、工学や化学の専門家のはずなのに、ヒト健康について発言しているのであれば、それは「にわか専門家」の可能性がとっても高いです。
逆もしかりです。ヒト健康影響評価の分野で生きてきたはずなのに、いきなり原子力発電事故の見通しなどを語ってしまったら、それも「にわか専門家」の可能性がとっても高いです(あまりこのパターンは見受けられませんが)。

人体に対する安全性についてはにわか仕込みの知識だけで語ることはできません。通常は、実験に従事して8年~10年くらいでやっと独り立ちができるようになります。この段階ではまだ「毒性学オタク」なので一般の方向けにわかりやすく説明できるレベルには達しません。そこから3~4年ほどの「脱オタク」修業を重ねることで、ようやく、一般向けの説明がなんとかこなせるようになります。

もっとも、最近はまともなことを言うと、あっという間に「御用学者」呼ばわりされてしまうので、こういう修業を積んだまっとうな専門家はだんだんしゃべらなくなってきています。
まずい「空気」ですね。